カテゴリ:旅・散歩( 11 )
秋の気配
5月の連休以来、イベント出店・作品展・出張ワークショップと
白浜を離れてあちこち駆け回る日々も
8月の終わりとともにようやく落ち着いてきました。

久しぶりの、何もない1人の時間。白浜の根本海岸へ散歩に行きました。

c0048685_1859194.jpgキャンプ場と海水浴場は夏の営業を終え 海辺は本来の静けさを取り戻しています。

台風のあとの漂着物(流木など)を探しながら砂浜を歩いていると 黒い犬とお散歩中の知人に遭遇。

「この夏はどうだった?」
「ええ、おかげさまで…」


立ち話をしているうちに 空はみるみる紫色に染まっていきました。

深い色あいに変化してきた夕暮れのグラデーションと
さらりと肌を撫でてゆく涼やかな風。
秋はもうすぐそこに来ています。

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by glass-drop | 2011-09-07 18:00 | 旅・散歩
白間津の大祭
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提灯や旗が晴れの場を
華やかに彩っています。
普段は静かな漁村が
たくさんの笑顔で
賑わっています。

4年に一度行われる
千葉県は千倉町の
白間津大祭
(しらまづのおおまち)。
国の重要無形文化財にも
なっているというその祭の
一部をのぞいてきました。


c0048685_13374443.jpg酒樽をくくり付けた
角材をかかげて
ゆっくり進む男衆。
斜めに持ち上げて
ピタっとポーズを
決めるのが見せ所か。

腕を震わせながらも
ポーズを決めてみせる
おっちゃんたちが特に
粋でかっこよかったな。

こういう場では、若い男性より年を重ねた男性の方が
だんぜん輝いてみえますね。


c0048685_1511394.jpg赤黒く皺の深い
男たちの歌に合わせ
ササラを鳴らして舞う
少女たちの円陣。
カラフルな花笠と
波模様の浴衣が愛らしい。

c0048685_1515710.jpgその円陣の真ん中で
小太鼓を叩いているのが
祭の主役ともいえる
神=日天と月天。

腕をいっぱいにふり上げ、
シンメトリーに舞う。叩く。
少しなまったようなリズム。
赤い髪と青緑の衣装の
コントラストが目に眩しい。


c0048685_13434931.jpg日天と月天に選ばれた少年は
祭のために50日の間
家族や学友とは別の
食事を取りつづけ、
毎朝浜へ下りて神に供える
砂を取るのだそうです。


c0048685_15355258.jpg日が暮れてきました。
沖の空にうかぶ月の
輪郭が徐々にくっきり
してきました。

暮れなずんでいく中、
漁港に掛かる大橋の上から
見おろした祭は
ほのかな光を放つ
ひとつの生き物のようにも
思えました。

次の大祭は2011年の夏。
その頃の南房総は、そして私はいったい
どんなふうに変化していることでしょう・・・
by glass-drop | 2007-08-01 13:44 | 旅・散歩
初午の祭礼
暖かい陽射しに満ちた朝。
開け放した窓の外からテンツク テンツクと
和太鼓の音が聞こえてきました。

c0048685_15104785.jpgベランダに出て眺めると、
万祝(まいわい)や
はっぴをまとった男たちが
小さな山車を引き、
路地を廻っているのが
見えます。

「御祭礼」の提灯が下がった
家の前で立ち止まると
太鼓のリズムが変わり
獅子舞いが始まりました。

町役場の裏手にある公民館で 催しものがあると聞き
散歩がてら見物しに行ってみました。

c0048685_15115939.jpgこの派手な色彩のタワーは
纏(まとい)かな?
祭礼に華やかさを添える
カラフルな花のお飾りは
何層にも束ねた薄い紙で
出来ています。

やきそばやお面など
数件のテキヤも並んで
祭りの気分を盛り上げて
くれました。


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ホールではお囃子に合わせ次々に踊りが披露されました。
化粧を施され着飾った少年が踊りながらミカンを投げ始めると
座り込んでいたお年寄りたちが手をいっぱいに伸ばし
夢中になって受け止めようとします。

見事ミカンを手にしたおばあちゃん、
ニコニコ嬉しそうにはしゃいでいました。

c0048685_15143183.jpg春の陽気に咲いた小さな祭礼。
のどかな和太鼓の音は
海沿いの集落に薄暮が
訪れるまで響いていました。
by glass-drop | 2007-03-05 15:15 | 旅・散歩
冬へ
c0048685_11593184.jpg凛と透った冬がやってきた

砂を覆うカジメのむくろ
冷えた両耳を交互に撫でる
波のささやき

夕暮れの灯台 モノトーンの雲
呆気なく訪れた夜を
鈍く照らしはじめる 細い月 

留まろうとしても全ては
変わることをやめはしない
風景も 時間も 自分でさえも

歩いて行こう 今という幻を
渚に打ち寄せる
記憶の欠片を拾いながら 

移ろう季節に 暖かな潮が再び
満ちてくるまで
by glass-drop | 2006-11-26 12:02 | 旅・散歩
畑地区を走る
気持ちよい晴天に恵まれた日。自転車で山を走りました。
白浜から山あいの静かな集落、畑(はた)を目指します。

c0048685_1512886.jpgマテバシイ、スギ、タケなど
様々な植生の林が
入れ代わりで現れる林道。

小さなトンネルが幾つか
あってなかなか面白い
道なのです。

参照記事:2005年11月9日
「林道2号線」
http://glassdrops.exblog.jp/m2005-11-09/#3038216


c0048685_16122641.jpg今回は千倉まで抜ける
つもりで向かったの
ですが・・・
畑地区は新しい道を作る
ための大掛かりな工事の
真っ最中でした。

行き交うダンプカーを
道の端に寄っていちいち
避けなくてはならず
スムースに走れません。

アスファルトはあちこち
ボコボコに陥没。
水がたまってぬかるみに
なっている箇所も
ありました。

せまい道を遮る沼のようなぬかるみを強引に突破。
しかし自転車のタイヤだけでなく、チェーンもギアも
思いがけず深さのあったぬかるみに飲み込まれ
べっとりとした砂混じりの泥を被ってしまいました。
もちろん服も靴も泥まみれ。あ〜あ・・・

c0048685_1572011.jpgこのままで走ったら
自転車が壊れて
目的地まで行けなく
なっちゃう・・・・

幸いにもほど近くに
湧き水が勢いよく
流れる水路を見つけ
ました。

自転車を水流の中へぶち込んで洗う、洗う、洗う!
冷たい水は先へと焦る気持ちを程よく冷やしてくれました。

c0048685_16162184.jpg数カ所あるトンネル
のうちの1つ。

近辺に鬱蒼と茂っていた
はずの原生林が
あまりにもあっけなく
切り開かれていました。

畑から千倉へと抜ける道の1つに車両通行止めの立て札が。
自転車1台くらい通れるだろうとタカをくくっていると
1キロほど進んだところで「工事関係者以外立ち入り禁止」
の看板とバリケードに進入を拒絶されてしまいました。
せっかく颯爽と下ってきた下り坂。すごすご上って戻ります。

立て札の指示に従って、ちょっと遠回りの山道へと迂回。
しかし疲れとともに上り坂がだんだんきつくなってきます。
無理せず自転車を降りながらゆっくりと押し歩きます。

ランナーズハイみたいなものなのか
身体のきつさを心が受け入れはじめた頃、景色が開けました。

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あぁ、けっこう高いところまで来てたんだなぁ!
常緑樹の多い房総の山。紅葉した木はちょっと少なかったけど
それでもちらほらと見える赤や黄色に心がなごみました。

さぁ、千倉の街中まであと少し。
ゆるく蛇行しながら下っていく見通しの良い坂道を、
ブレーキをほぼ解放にして走り抜けました。
風になって飛ぶように疾走する、あぁこの開放感よ・・・!

上り坂の苦しさ。下り坂の疾走感。
どちらも自転車こぎの醍醐味と言えましょう。
また走りに行きたいな。早く道路工事終わらないかな・・・
by glass-drop | 2006-11-23 15:14 | 旅・散歩
太公望の聖地
それは3月のお彼岸の頃のことでした。
桜の花が咲く、知る人ぞ知る美しい水辺の風景があるという・・・
そんな話を聞いたのです。こうなると居ても立ってもおれません。
またまた自転車にとび乗り、小さな探検へと出かけました。

c0048685_2011125.jpg近くに立つ看板。
釣り人たちには
よく知られた
場所のようです。


チョロチョロと流れる用水路の上方がその場所でしょうか。
道の脇に自転車を止め、斜面を登っていくと、
鏡のような水面に木々の影が落ちる堰(せき)が現れました。

c0048685_20505996.jpg堰の脇に咲く桜。(大島桜?)
ひとえのまっ白な花びらが
青空に凛と映えています。

池の周りを半周してみると、
細い水路が見えてきました。
上にはまだ何かありそう‥‥

よーし、たどってみよう。

c0048685_1957550.jpg

予想どおり、水路を辿っていくと第2の堰が現れました。
最初の堰より規模は大きく、けっこう奥まで続いているようです。
水辺に沿って伸びる小道を、右周りに歩いて行くことにしました。

c0048685_1958242.jpg細い水の流れに架かる、
生木でこしらえた小さな橋。
少しグラつくその上を慎重に
渡り、奥へと進みます。

道を遮るように倒れた木々を、
人が通れるだけの幅に切って
トンネル状にした箇所も
ありました。

これぞ本来のアスレチック!?
なんて思いつつ、泥を踏みしめ
幹に手を掛けくぐり抜けます。
さらに奥へ進み、斜面を登ると
小さな第3の堰もありました。


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水辺へ張り出すように傾いて、
水面スレスレに伸ばした枝に花を咲かせている桜。
第2の堰には、このような倒木が多く見受けられました。

こういった倒木の影は、魚たちの絶好のすみかであるはず。
そう思って水中に目を凝らすと、やはりそれらの影の下に
20センチくらいの魚影が揺れているのを確認できました。

姿形から察するに、どうやらヘラブナではなさそう。
ひなたぼっこでも楽しむかのようにゆっくり泳いでいましたが
人の気配を察するや否や、あわてて深みに消えていきました。

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「ここのヘラブナもずいぶん少なくなってしまったよ。
 ブラック・バスが入ってしまったからね・・・」
と、小さな足場に座りこんで釣り竿を伸ばしているおじさん。

一方、向かいの岸に立つジャージ姿の少年は、巧みにルアーを
操ってそのブラック・バスの方に狙いを定めているようでした。
外来魚は釣り人の生態系をも変えつつあるのかもしれません。

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水面に少しせり出すようにして作られたヘラブナ釣りの足場。
大人が1人座るのがやっと、という小ささです。
道具箱やタモを手近に置けばまるでコックピットのよう。
水辺のあちこちに設置されていました。

木の板で出来た足場に、そうっと降りて座ってみました。
空と木々、やや乳濁した水面だけが目の前に広がります。

c0048685_20301329.jpgそよぐ風、時おり水面に現れ
広がっていく波紋・・・。
遠くに聞こえるウグイスの
声も、あたりの静けさを
より一層際立たせています。

俗世から隔離されたような、
水辺のちいさな陣地に
すっぽりと身を納めて、
誰にも邪魔されることなく
釣り糸をたれる1日・・・

太公望だからこそ味わえる
至福の時間がここにはあるのですね。


お気に入りマップに、またひとつ宝の在りかが記されました。
日だまりの中、ちいさな探検は続きます。
by glass-drop | 2006-04-10 11:00 | 旅・散歩
白浜ダム
ほんのり暖かい陽射しに恵まれた午後。
自転車に乗って森の中の小さなダム湖へ向かいました。

c0048685_22383149.jpg白浜町を走る国道410号から
バス停「安房横渚」あたりを
山側に向かう道へ入っていきます。

坂道を登っていくと、土地が開けて
まばゆいばかりのレモンイエローが
目に入ってきました。
菜の花畑です。

花の匂いが漂う中、ミツバチ達が
ブーンと羽音をたてながら
せっせと蜜を集めていました。

空気はまだ暖かさに欠けますが、ペダルを踏んでいると
身体が徐々に暑くなってきます。
一枚また一枚と上着を脱いで腰に巻き、道の奥へと進みます。

森の中を通る道の右手に浄水場が見えてきました。
ダムの水はここで浄化され、家々に行き渡っていくのでしょう。

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青く小さな花びらのイヌフグリ。薄い紫色の可憐なスミレ。
道端には色々な春の花たちが咲いていました。

c0048685_22415328.jpg去年見かけた浦島草の仲間にも
また会うことができました。

奇妙な色と形をした
その花のたたずまいは
爬虫類を思わせます。
あちこちにニョッキリと
カマ首をもたげていました。


ミツバ、セリ、ノビルなどの
食べられる春の山野草も
あちこちに生えていました。

自転車を道の脇に止めては、
少しずつ摘みとります。
もちろん今晩のご飯の
おかずにするつもりです。


道沿いには山小屋風の別荘みたいな家が点在しています。
誰だったか地元の人が、このあたりのことを
「房州の軽井沢」と呼んでいたのを思い出しました。

静かで日当たりのよいこんな山里に、家を持てたら素敵。
ゆったりとした時間の中でおだやかに日々を暮らせそう・・・
ただ、このあたりは携帯電話の電波がしっかり「圏外」に
なってしまう地域のようです。
あちこちを飛び回っていたい私にはまだ早い夢かもしれません。

c0048685_22443180.jpgさあ、いよいよ海辺の町の
小さな水がめ、白浜ダムに到着。
自転車から降りて敷地へ入ります。

なかなか味わいのある書体の
看板が入り口に立っていました。
釣り禁止ってことは、つまり・・・
魚がいるということなんですね?


c0048685_21202924.jpg古びたコンクリートが
いい味を出している
ダムの縁。
橋のようになっている
ので、歩いて渡って
みました。



c0048685_030362.jpgこんもりと茂った木々が
水鏡に映っています。
新緑の季節にはさらに
美しい風景になりそうです。


c0048685_0564979.jpg中ほどまで渡り歩くと
ポンプが水面に伸びていました。
機関車みたいに黒くてごつい。
なかなかの存在感です。


ダム湖の水辺に降りてみました。
下草はきれいに刈り取られ、ゴミ箱も設置されていました。
手入れがゆきとどいた水辺。地域の憩いの場なんでしょうね。

c0048685_0314923.jpg


c0048685_033120.jpg周囲に植えられた木は
桜の木のようでした。
水辺に映る満開の
桜の花・・・
どんなにか美しいこと
でしょう。

その頃になったらまた
自転車で来てみようかな。

ガイドブックには記されていない美しい風景。
そんなお宝のような場所が、この町にはまだまだ沢山ありそうです。
by glass-drop | 2006-03-15 22:50 | 旅・散歩
林道2号線
おだやかな小春日和。
こんな気持ちのよい日に家の中にいるなんて、勿体ない・・・
仕事は夜に後回し。自転車に乗って出かけることにしました。

c0048685_1957210.jpg

白浜と館山の畑(はた)を結ぶ「林道・畑2号線」の入り口。
しばらくは自転車を押しながら徒歩で坂道を進みます。

坂道を登り切ったところには、ため池と小さなほこら。
後ろを振り返れば、パノラマのように広がる白浜の街と海。
ここからしばらく、道はマテバシイの原生林を通ります。

c0048685_1958742.jpg薮のあちこちに美しい朱色の
カラスウリが実っていました。

マテバシイのドングリを拾いながら
自転車を押していると、
ジョギング中のおじさんが軽快な
足どりで通りすぎて行きました。
畑のたい肥にするための落ち葉を
かき集めている人たちもいます。

天気のよい日にはほんの少し
人出が多くなる森の道です。


林道は少し湿り気を帯びた静かな空気に満たされています。
虫の音と遠くの鳥の声、そして落ち葉を踏みしめる音が
辺りの静けさをいっそう際立たせています。

c0048685_19593899.jpg緑のコケとシダに覆われた切り通しの道を進んでいくと、乗用車が1台通れる程度の小さなトンネルが見えてきました。

幾重もの地層が美しいシマ模様を描いている、古そうな手掘りの壁。真っ暗な中をすすむと空気はいっそうひんやりとしてきます。

ライトを点灯してこわごわ通り抜け、さらに林道を進んで行きます。

徐々に植林されたヒノキやスギが目に付きはじめました。
あたたかな陽光が差し込む所には、黄色や赤に染まった
ツタやウルシの木。なぜか少し気持ちがホっとします。

トンネルを3つ抜けると小さな橋が現れました。
橋の下を流れるのは、やがて海へとそそぐ長尾川。
2〜3日前の雨で少し乳白がかった水底には
数匹の小さなハヤがのんびり泳いでいるのが見えました。

c0048685_200422.jpgしばらく行くと視界が開け、林道はアスファルトの道路に合流。畑(はた)地区に入ったようです。

自転車を止め農道を歩いていくと、ポッカリと空が抜けました。

奇妙な四角い建造物は竹製の囲い。正月の飾りに使われる「千両」を栽培するためのものなんだそうです。

道が整備される以前はまさに陸の孤島だったという畑地区。
市街地からの灯りが届かず街灯も少ないこの地域は
天体の観測には最適なのだと、どこかで聞いた事があります。

いつかここで天の川や流れ星を見てみたいなぁ・・・
でも夜にあの真っ暗なトンネルを通るのはちょっと、ね・・・


風のおだやかな小春日和には森へ。
波のおだやかな大潮の日には磯へ。
強い西風が冬を連れてくるまでの間、散歩日和が続きます。
by glass-drop | 2005-11-09 20:02 | 旅・散歩
パイパティローマ
沖縄の八重山諸島を好きになって、足繁く訪れた時期がありました。

c0048685_1841471.jpgとろけたゼリーのような海。
痛いほどに強烈な太陽の光。

白いサンゴ砂の小道に
くっきりと影を描いている
パパイヤの木。

夜の闇を吸い込んで
息づく亜熱帯の森、
本が読めそうなほどの
星あかり‥‥


何もかもが美しく輝いてみえました。
この島々こそ自分にとっての至上の楽園なのかもしれない。
辛いことに耐え切れなくなった時には、ここへ来ればいいのだ‥‥
そんなふうに思いました。

それほどまでに美しい八重山の島々。
その南のはずれにあるサンゴ礁の小さな島、波照間(はてるま)には
「パイパティローマ伝説」という言い伝えがあります。

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 昔むかし。波照間島に住む人々は 役人共から重い税をかけられ
 貧しく厳しい生活を強いられていました。
 苦労して得た少しばかりの作物はみな取り上げられてしまいます。
 周りを海に囲まれた小さな島では役人から逃れる場所もありません。

 そんな辛い暮らしの中、どこからともなく噂が立ちはじめました。
 「波照間の沖、ずっと南のほうに豊かで素晴らしい島があるらしい」
 そこへは役人も追ってきはしない。楽園のような所だというのです。

 噂を信じた一部の人々は船を漕ぎだし波照間を脱出してゆきました。
 その楽園のような島、南波照間(パイパティローマ)を目指して。
 そして再び帰ってきたものはいなかったということです・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

南波照間=台湾の蘭嶼(ランユウ)を差しているという説があります。
(八重山独特の古い漁具が蘭嶼島でも発見されたのだとか)

南の島に夢中だったその当時、伝説をたどるべくフェリーに乗って
八重山から台湾まで渡ってみたことがあります。

夜中に基隆港へ着くと、漢字の筆談でなんとか台湾ドルを手に入れ
そのまま夜行列車に飛び乗って台東という街へ。
台東からは定員10人たらずの小さなプロペラ機に乗り込んで
蘭嶼島に向かいます。

島はスクーターで2時間もあれば1周できてしまうような大きさ。
ムクムクと隆起したような岩山が海の際からそびえ立ち、
岸には大きな丸石がゴロゴロと転がっています。
雄大な自然に囲まれた島ではありましたが、何だかイメージしていた
南の楽園とは違っていたのでちょっと面喰らってしまいました。

荒い岩肌の海辺にはガラスの浮き玉が幾つも転がっていました。
それらは波照間の柔らかな砂浜で拾ったものと同じ色とカタチで、
「君を待っていたよ」と言わんばかりに輝いていたのでした・・・


自分にとってのパイパティローマ。
今になってみればその楽園とは、南の彼方にある島というよりもむしろ
南へと向う想いそのもの、だったように思われるのです。
by glass-drop | 2005-04-05 14:02 | 旅・散歩
春の匂いがする昼さがり。
町の後ろにある小さな山へ散歩に出かけました。

c0048685_23472763.jpgキンセンカの花畑。
そのきっぱりとした色は、
光を放っているかのような
鮮やかさです。


カメラを向けていると、畑の持ち主のおばちゃんが
「持っていっていいよ」と花を何本か分けてくれました。

花畑は収穫のピークを迎えているようです。
花摘み農園はどこも花を観にきた人々で賑わっています。
しばらくのあいだ静かだった南房総に活気が戻ってくる時期です。


花畑を抜けて山の坂道を登っていくと、絶景の場所に辿り着きました。

クリアーな春の陽射しを受けてきらめく海。
その海と山にはさまれるように集まっている民家や畑。
手の平にちょこんと置けそうな小ささです。
c0048685_23481833.jpg

風に運ばれて山まで届いてくる潮騒をBGMに
自分の暮らす町を眼下に眺めていると、
なんだか鳥にでもなったような気がしてくるのでした。
by glass-drop | 2005-03-14 23:41 | 旅・散歩