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ラムネ瓶
連休をかき回した台風が過ぎ、海辺は穏やかさを取り戻しました。
少し冷えこんできた空気。強いマゼンタ色をしたおしろい花が
あたりに濃密なかおりを漂よわせています。
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夕方の海辺でラムネ瓶だったらしきものを拾いました。
胴体には丸に十字の印と「安房北條 秋山製」の文字。
背中には「非売品」。底には「ナ」の記号が入っています。
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底の「ナ」はこの瓶を作った
ガラス工場の印でしょうか。
瓶の横腹にはうっすらと
型のあとが残っています。

昭和の前半、安房北條駅(現館山駅)近くで作られたものでしょうか。
非売品ということは、何か記念品のようなものだったのかも・・・
秋山とはどんな店または会社だったのか、
このラムネ瓶はどんな機会にふるまわれたのか、
失われてしまった上半分は一体どんなカタチだったのか・・・
想像はさらに膨らんでいきます。

透明な緑青色の瓶を夕方の弱い光にかざすと
内部にこまかい泡が含まれているのがわかりました。

その小さなひと粒ひと粒に、この古い瓶が作られた当時の
ガラス工場の空気が閉じ込められている・・・
そう気付くと、壊れたラムネ瓶が何だかとっても貴重な
タイムカプセルのように思えてくるのでした。
by glass-drop | 2005-09-27 18:50 | おきにいり
彼岸
夕方のやわらかい陽射しがあたりを包んでいます。
空気はサラリと涼しくほのかに秋の匂いがします。
そんな9月の海辺で、久しぶりにガラス拾いをしました。

役目を終えて海辺に捨て去られたガラスたち。
少しずつ波に砕かれ、水の中へと運ばれて行きます。

c0048685_2042275.jpg潮と砂に
何度もゆっくりと
洗われ やがて
くぐもった
柔らかい色を
まとっていく・・・

ガラスのかけらたちは、寄せては返す波に翻弄され
軽くぶつかりあい、シャラシャラと優しい音をたてています。
その中に、まだ形を留めている古いおはじきが混ざっていました。

かつては子供たちと一緒に楽しく遊んでいたであろう彼も
今はただ波の動きに身をまかせ、かすかな音をたてているだけです。
そっと拾い上げ天にかざすと、海の色に似ていました。


波にその身を削り、少しずつ小さくなって行くガラスのかけらたち。
その優しく透んだ音は、願いのコトバなのかもしれません。

「いつか海の水へ 溶けていけますように・・・」
by glass-drop | 2005-09-20 20:34 | おきにいり
海へ
昨日今日と1人で海に潜ってきました。
普段1人で入ることは(身の安全を考えて)ほとんどないのですが
海中での気持ちよさを思うと、何だか入らずにはいられない気分。
少し潮が満ち波風もあったけれど、いつもの磯へと向かいました。

9月の海中はまだまだ海水温が高く、海草も少なくて泳ぎやすい。
むしろ7月頃のほうが水が冷たいので身体にこたえます。
海水温は気温より約2ヶ月遅れているので、海はちょうど今が夏。
家族連れや釣客が減るこの時期こそ海を堪能するチャンスです。

ラッシュガード、マスクとシュノーケル、フィンを身につけ
ヤスを手に握って水際へと近づきます。
岩と岩の間の、比較的波がおだやかな場所を選んでエントリー。
一瞬ヒヤっと冷たいのを我慢して頭まで水に浸かりさえすれば
あとはもう別世界。ただひたすら楽しむだけです。

生まれて間もない小魚達、迷いこんで来たサヨリ、チョウチョウウオ。
昨日とはまた違う魚たちと会うことができました。
波が起こす泡で少し乳白がかった海の中に、
太陽の光がカーテンのように射しこんで輝いています。
重力から解放され、ただただ水中に広がる世界に目を遊ばせます。

あぁ・・・なんて気持ちいい・・・・!
水の冷たさで心がどんどんクリアに洗われていく感じ。
深みの続く場所でフィンを蹴り、スピードをあげて海中を飛べば
気分だけはもう魚です。

魚になりきったら、こんどは狩りに挑戦。
虹色のニシキベラをヤスで突こうとするがうまくいきません。
ハコフグを見つけ追い掛けるけれど、逃げられてしまいました。
今度は大きなボラに狙いを定める。が、銀のウロコが数枚ほど
散っただけ。惜しくもかすってしまいました。
う〜む、ヤスで突くのはなかなか難しいぞ・・・

数十分も潜ると身体が冷えて指が少ししびれてきます。
こうなったらもう上がり時。
今回は軽く1ラウンドで終えることにしました。
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海を眺め、海を歩き、海に浸る。
そんな日々を送り始めて早くも半年が過ぎました。
ヘコんだ時であろうと淋しい時であろうと海はいつもそこにある。
毎日少しずつ違った表情をみせながら「こっちへおいで」と私を招く。
1人でいても独りじゃない。そんな気がする海辺での暮らしです。
by glass-drop | 2005-09-13 14:59 | 自然
海女小屋にて
c0048685_1314525.jpg白浜のとある海辺に建つ
海女小屋。

はるばるモントレーからやってきた40人のアメリカ人を前に、現役の海女たちがアワビの素潜り漁について語りはじめました。

そう。これは先に南総文化会館にて行われたイベントの続編。
裏方として参加している友人達に便乗し、私も行ってみました。

1975年に建てられたという海女小屋は意外にも広々して涼しい空間。
高い天井はいろりの煙でいぶされたのかまっ黒に煤けていました。
窓の外には大シケの海。日本の南東で暴れている台風の影響でしょう、
ものすごい大きな波が磯の岩に当たって白いしぶきをあげています。
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「こんな日に潜るんなら、○億円の保険でもかけないと」
一同の笑いを取る陽気な海女のおばちゃん。
レクチャーはとってもなごやかな雰囲気の中で進んでいきます。

さまざまな素潜り漁の道具を、海女はこう言って紹介し始めました。
「私たちの武器よ!」

c0048685_138050.jpg「靴下をはいて足ヒレを着ける。昔はヒレなしで潜ってたよ。これは最近使われるようになったウェット・スーツ。今は暖かいから使ってないよ。5月頃の寒い時期に使うの」

着用すれば水中での冷えに耐えることができ、長く潜っていられる。それが過剰採集につながるということで、禁止されていたはずのウェットですが・・・
アワビが減って短時間の潜水では見つかりにくくなったことが関係して
いるのか、地域によっては着用が許可されてきているようです。

「これは耳栓。耳が水圧に弱い人はこれを詰めるの。
 昔はチューインガムを使ってたから髪の毛にくっついちゃってね」

c0048685_13243015.jpg黒いモノに包まれた灰色の固まりが耳栓。ペトペトしたお餅みたい。

メガネは濃い緑色のゴム製。以前使われた金属製のものに比べると密着度が俄然高くて大変使い易いそうです。


「これは浮き樽。海に入ったらこの上に乗っかって浮くの」
浮き樽から延びているのは長いロープ。いわば海女の命綱。
およそ5mというその長さが、すなわち潜る深さというわけです。
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もっと長いロープが付いている浮き樽もありました。それには途中でねじれて絡んでしまうのを防ぐために、より戻しの金具が付いていました。

樽の上に乗っているのはアワビを起こす道具です。
(以前一緒に潜った千倉の海士は、これの重さで身体が浮くことなく潜れると言っていました)


c0048685_132991.jpg獲物を入れるタマリと、貝殻の大きさを計るスケール。小さい内枠がサザエ用。外枠がアワビ用です。

漁協に収めたアワビは再び1つ1つ計り直され、1ミリでも基準の大きさに足りなければ没収されてしまうとか。

「だから、小さいのは自分達で食べちゃうのよ!」

では大きなアワビが捕れたら?
殻を記念に飾ったりはしますか?
そんな質問が参加者の中から出ました。
c0048685_13314022.jpg「お金にしたほうが嬉しいからね〜。漁協に渡しちゃうよ!それに大きすぎるアワビはあまりおいしくないのよ。」

へぇ、そういうものなんだ?
先日見た巨大なモントレー産アワビを思い起こす私。

そこで「精算単価表」という貝類の買い取り価格のリストを見せてもらいました。

確かに大きすぎず捕獲時のキズが付いていないものが
より高値で取り引きされているようでした。
なにしろ一般価格では安くても1個3〜4千円はする高級食材です。
見栄えが良く扱いやすい大きさであることが重んじられて、当然かもしれません。

潜水時間についての質問も出ました。
「潜水時間はだいたい50〜60秒。海底で作業もするからね。
60秒を超えて潜っていられる海女はそう多くないよ。
だけど水槽の中だったらもっと長く息を止めていられるよ。」

ここで60秒がどれだけの長さなのか息を止めて感じてみよう、
という提案がなされました。
参加者も海女も合図で一斉に息を止めたのですが・・・
途中で耐えられなくなった人の「ぷは〜!」という声に
海女さんたちは耐え切れずププーッ!と吹き出してしまい、
皆もつられて大爆笑!実験は失敗に終わったのでした・・・・!
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終始笑いのたえない和やかな雰囲気の中で行われたレクチャー。
上記のほかにも「へぇ〜!」「なるほど〜!」の連続。
たいへん面白く充実したひとときでした。

「こんどは海女さんたちがモントレーを訪れる番だね。
 シュワちゃん、招待してくれないかな〜〜!?」と友人たち。
漁業の面からの平和的日米交流をさらに押し進めるべく、
まずはカリフォルニア州知事にアワビ・ステーキでも
召し上がって頂きましょうかね?!
by glass-drop | 2005-09-05 16:27 | 自然
アワビと海ホタル
房総とカリフォルニアのモントレー。
大平洋を挟む2つの半島はその昔「アワビ」で繋がっていた・・・
こんなテーマで展開されたイベントに行ってまいりました。
場所は館山の南総文化ホール。南房総の文化拠点です。

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その昔、南房総ではアワビの素潜り漁はもちろん、潜水具を使っての漁も盛んに行われていました。

まるで宇宙服みたいな潜水具に身をつつみ海の底へと降りていく海士。
そして船上からパイプで送られてくる空気で呼吸しつつ獲物を探します。

この道具を使えば、海水温が低くても長時間海中に潜ることが可能となり、大量にアワビを捕ることができたといいます。
(現在は潜水具着用でのアワビ漁は行われていない)


そんな漁師町の千倉で海産物商を生業としていた小谷兄弟が、
地元の海士たちを連れて海を渡ったのは1897年(明治30)。
モントレー湾の豊富なアワビ資源に目をつけてのことでした。

モントレー湾のポイント・ロボス地区は地形が房総の磯にそっくり。
海岸にはアワビの殻が大量に打ち上げられ、海の中を覗き込めば
あっちにもこっちにも、何百といってもいい数のアワビが
無造作にペタペタと張り付いていたそうです。
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↑モントレーの海辺の風景

小谷兄弟が来る以前にアワビを利用する者はほとんどいませんでした。
(中国系移民が土産物へ加工するために殻を採っていた程度)
おかげでポイント・ロボスの海は豊富すぎるほどにアワビを貯え、
彼らやアワビ漁師たちにとって光り輝く宝の山となったのです。

兄弟は缶詰め工場を作ったり、レストランのオーナーと組んで
アワビのステーキを普及させたりと異国の地でアワビ事業を展開。
ちなみに千倉町出身のハリウッド・スター早川雪舟の渡米も
このアワビ事業と少なからず関連があるようです。

しかしアワビによる日米交流は戦争によってストップしてしまいます。
ポイント・ロボスの日系人たちは強制収容所に連行され、
小谷一族のアワビ事業も終了を余儀なくされたのでした・・・

現在は州の保護区となっているポイント・ロボス。
小谷一族やアワビ漁に携わった人々の子孫が暮らす町は
「コダニ・ビレッジ」として地図の上に歴史を刻んでいます。

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アワビ貝殻の山に立つ小谷源之助。殻の大きさに注目!
(画像はクリックで拡大します)

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アワビを通した日米の交流についてのスライド・トークは
南房総の海とおおいに関係のある、とても興味深いものでした。
(設備の問題で肝心のスライドが見えにくかったのが残念)

そして驚いたのがサンプルで出てきたモントレー産アワビの殻。
その大きさといったら!!直径は30cmはあったでしょうか。
確かにあれなら「ステーキ」を名乗っても恥ずかしくなさそう。
とにかく今まで見たアワビとは別格の大きさでした!!


このイベントでは、アワビの他にも驚きの歴史をもう1つ
知ることができました。「海ホタル」にまつわる戦争秘話です。

イベント前半では今年が戦後60周年に当たるということもあり、
海ホタルと戦争がテーマの壮大な組曲を合唱団が唄いあげました。
その歌詞の中に注目すべき戦争秘話が描かれていたのです。
それは・・・

「海ホタルが軍事目的に利用されようとしていた」というもの。
えぇ〜〜!?あの海の中で光るミジンコのような生物がぁ??
(ちなみに海ホタルは、以前ブログに書いた夜光虫とは別の生物)

なんでも集めた海ホタルを乾燥させてすり潰し、
俵に詰めて陸軍の研究施設に献上したのだとか。
乾燥したものに水をかければ何回でも青く光らせることが出来る。
そのことを何かに利用しようとしたらしいのですが・・・

海ホタル集めに学徒動員された人の手記によると、その任務とは
「2つに割った魚の頭にヒモを付けて海に沈め、獲物が集まるのを
ひたすら待ち続ける」という実にノンキなものだったとか・・・・

ちなみに最近読んだ本「海女たちの四季」では、
千倉の海女は戦時に海草のカジメを大量に採っては
軍に献上していた・・・という内容が記されていました。
その理由はなんと「カジメは爆弾の原料になるから」(!?)

海ホタルといいカジメといい、戦時の風景の中にも
房総ならではの個性があった・・・・。
これらの事実には、アワビの大きさにも増して
驚きを禁じえない私なのでした・・・


※画像は冊子「大平洋にかかる橋」より複写&トリミング・転載
(NPO法人南房総文化財・戦跡保存活用フォーラム編)
by glass-drop | 2005-09-04 01:34 | 自然