パイパティローマ

沖縄の八重山諸島を好きになって、足繁く訪れた時期がありました。

c0048685_1841471.jpgとろけたゼリーのような海。
痛いほどに強烈な太陽の光。

白いサンゴ砂の小道に
くっきりと影を描いている
パパイヤの木。

夜の闇を吸い込んで
息づく亜熱帯の森、
本が読めそうなほどの
星あかり‥‥


何もかもが美しく輝いてみえました。
この島々こそ自分にとっての至上の楽園なのかもしれない。
辛いことに耐え切れなくなった時には、ここへ来ればいいのだ‥‥
そんなふうに思いました。

それほどまでに美しい八重山の島々。
その南のはずれにあるサンゴ礁の小さな島、波照間(はてるま)には
「パイパティローマ伝説」という言い伝えがあります。

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 昔むかし。波照間島に住む人々は 役人共から重い税をかけられ
 貧しく厳しい生活を強いられていました。
 苦労して得た少しばかりの作物はみな取り上げられてしまいます。
 周りを海に囲まれた小さな島では役人から逃れる場所もありません。

 そんな辛い暮らしの中、どこからともなく噂が立ちはじめました。
 「波照間の沖、ずっと南のほうに豊かで素晴らしい島があるらしい」
 そこへは役人も追ってきはしない。楽園のような所だというのです。

 噂を信じた一部の人々は船を漕ぎだし波照間を脱出してゆきました。
 その楽園のような島、南波照間(パイパティローマ)を目指して。
 そして再び帰ってきたものはいなかったということです・・・

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南波照間=台湾の蘭嶼(ランユウ)を差しているという説があります。
(八重山独特の古い漁具が蘭嶼島でも発見されたのだとか)

南の島に夢中だったその当時、伝説をたどるべくフェリーに乗って
八重山から台湾まで渡ってみたことがあります。

夜中に基隆港へ着くと、漢字の筆談でなんとか台湾ドルを手に入れ
そのまま夜行列車に飛び乗って台東という街へ。
台東からは定員10人たらずの小さなプロペラ機に乗り込んで
蘭嶼島に向かいます。

島はスクーターで2時間もあれば1周できてしまうような大きさ。
ムクムクと隆起したような岩山が海の際からそびえ立ち、
岸には大きな丸石がゴロゴロと転がっています。
雄大な自然に囲まれた島ではありましたが、何だかイメージしていた
南の楽園とは違っていたのでちょっと面喰らってしまいました。

荒い岩肌の海辺にはガラスの浮き玉が幾つも転がっていました。
それらは波照間の柔らかな砂浜で拾ったものと同じ色とカタチで、
「君を待っていたよ」と言わんばかりに輝いていたのでした・・・


自分にとってのパイパティローマ。
今になってみればその楽園とは、南の彼方にある島というよりもむしろ
南へと向う想いそのもの、だったように思われるのです。
by glass-drop | 2005-04-05 14:02 | 旅・散歩