海は気まぐれ

大潮の朝。
生い茂った海藻がとぎれておだやかな水底を見せている岩場に
またしてもあの鮮やかな青い魚、カタクチイワシの群れがいました。

これはすごい!タモ網ですくったらいくらでも取れてしまいそう!
あわててタモを取りに家へ戻り、岩場に引き返してみると・・・
イワシたちが群れの形をくずしてあちこちに逃げまどっています。
そこには黄と茶の虎柄をした長い体の生き物が、カっとクチを開いて
身をひるがえし、群れに襲いかかっていました。ウツボです。

しばしの間イワシをつかまえるのも忘れ、
その凶暴な攻撃ぶりをじっくりと見物してしまいました。
「いつかヤスで突いてみたいなぁ」なんて思っていたのですが
けっこう手ごわそう。海のギャングとはよく言ったものです。

ウツボ見物とイワシ取りもそこそこに、ふたたび岩場を歩きました。
磯ではおじさんがしゃがみこんで大きな岩の下をのぞいています。
「笠貝を取ってるんだよ。塩ゆでしてからワサビ醤油で食べると
 なかなか旨いよ。歯触りもプリプリしてアワビみたいなんだ」
赤い縞模様をまとった浅い円錐形の貝。陣笠みたいな形です。
ふ〜ん。これ、食べられるんだ・・・

翌朝、またイワシをねらってタモ網片手に磯へ出てみました。
昨日はオイルサーディンを作ったから、今日は南蛮漬けでも・・・
そんなワクワクとした気持ちで水中をのぞきこみました。
が、イワシは一匹としていません。もちろんあの凶暴なウツボも。
少々肩すかしをくらったような心持ちでしたが、このまま帰るのも
なんだか惜しいのであの笠貝を探してみることにしました。

岩の影にひっそりと隠れるように張り付いている貝を発見したら、
貝殻と岩肌のわずかなスキ間を狙い一瞬のうちにヘラを差し込みます。

c0048685_17381748.jpg失敗してしまうと貝は固く岩に張り付いてもうピクリともしません。けっこう強力に岩に張り付いているので、ヘラが抜けなくなることも。

苦心の末に何個か、そこそこの大きさの笠貝を取ることができました。

写真は笠貝(マツバガイ)と磯玉(クボガイやアマオブネ)

おじさんの言っていたとおりに塩を入れた水でゆでていくと、
その笠を脱ぐかのように貝殻からポロリと白い身が剥がれ落ちました。
キモを取り去ると、なんだか軍艦巻きみたいな妙なカタチ。
小ぶりなものを選んで少し醤油を付け、口に放り込みます。

うん、おいしい!
適度な歯ごたえがあり、噛みしめるとほのかな甘味があります。
磯玉のような潮くささや苦味はほとんどありません。
大きめの身は切ってオリーブオイルとレモンで和えてみました。
笠貝。こいつは意外とあなどれませんぞ・・・・


海は気まぐれです。
今日出会った生き物たちと、明日もまた会えるとは限りません。
それでも毎回ワクワクしながら海に出かけて行くのです。
そこには新たなる出会いが待っているかもしれないのですから!
by glass-drop | 2005-06-07 17:39 | 自然