海士と潜る(その2)

(上ページからの続き)

海辺にいくつか置かれている押し入れほどにも満たない小さな箱。
3人座るのがやっとというこのシェルターの中でストーブを焚き、
海水と風によって体温を奪われ指先がしびれるほどに冷えきった体を、
汗が吹きだしてくるまでじっくりと暖めます。
暖めが足りないと、あとで頭が痛くなったりしてしまうのだそうです。

身体が充分に暖まったところで2ラウンド目の漁がはじまります。
私たちは再び海の中へ入っていきました。
はてさて・・・私にも獲物を見つけることはできるのでしょうか??

アワビの好む場所を海士は丁寧に説明してくれました。
「ほら、ここの岩がタナみたいに掘れているところ。
 これがあっちまでずっと続いていて、隙間にアワビが隠れている」
水中に潜って指し示した隙間をのぞきこむと、確かに岩肌とは異なる
何か塊のようなものが奥のほうにあるのが何とかわかりました。
おぉ!これがアワビ!?

ようやく獲物の好む場所が何となく理解できてきました。
注意深く探していきますが、そう簡単には見つけることができません。
それもそのはず、アワビの貝殻の表面は海藻や海綿で覆われていて
一見しただけでは岩肌と同じようにしか見えないのです。
アワビを次々と剥がしていく海士はさすがです。
獲物のオーラを第六感で嗅ぎとっているとしか思えません・・・?!

息を整えながら私も根気よくタナを覗き獲物を探してまわりました。
そしてついに怪しい塊が岩のタナに逆さにへばりついているのを発見。
塊から黒い触角のような物が出てちろちろ動いているのが見えます。
これは・・・・アワビ!?
少しドキドキしながら、持参していたコーキングヘラを岩と塊の間へ
一気に差し込み、パカリと剥がしました。

捕れた獲物は殻の縁の形と呼吸孔の数がアワビとは少し違っています。
近い種類の貝、トコブシでした。
それでも嬉しさと、そして寒さとでブルブルと身体が震えます。
さらに探しまわると、2個目を捕らえることが出来ました。

漁を終え、冷えた身体を暖めながら捕れたてのアワビを頂きました。
まずは生のアワビを潮味のまま大胆に丸かじり。
コリコリとした歯ごたえで、噛み締めると磯の香のむこうから
ほのかな甘味がしてきます。
ストーブで殻ごと焼いたものはプリプリと柔らかい触感、
甘味も増してさらに美味しく感じました。
なんとも豪快で贅沢。漁場ならではの味わい方です。

c0048685_1554379.jpgお裾分けも頂いたので、さっそく自宅に持ち帰って料理しました。
ゴマ油で風味を付けたアワビ粥、少し柔らかく蒸してからのバター焼き。そして生のアワビにキモと味噌と大葉を加えてたたいた、なめろう。このなめろう、実に滋味あふれる味わい。お酒に合うこと請け合いです。


海士・海女という仕事は、そう簡単に出来るものではなさそうです。
自然と真摯に向き合い、体調を管理し、漁場のルールを守ることが
出来てこそ漁をする資格があるのだ、ということがよくわかりました。

また1つ、南房総の海の魅力を知ることができた今回の素潜り漁体験。
たいへん興味深く良い経験となりました・・・!
by glass-drop | 2005-06-29 15:55 | 自然