海士と潜る(その1)

海に潜ってアワビやサザエなどの漁をする海士(あま/かいし)。
ひょんなことからその漁に同行する機会を得ました。

南房総のとある小さな漁港。
建物の屋根の下に漁師たちが集まって何やら会議をしている様子。
今日の漁を操業にするか否か話しあっているのだといいます。
「あの屋根の向こうに赤い旗が上がったら、今日の漁は中止だよ」
知人を介して知り合った海士の男性は漁港を指してそう言いました。
いつもなら漁ができるかどうか既に判明している時間らしいのです。
が、しかし旗はなかなか上がってきません。

空は晴れわたり夏の陽射しが眩しく降りそそいでいます。
けれども海の中は穏やかではないのかもしれません。
風や波、潮の流れによっては命に関わる危険が待ち構えている場所。
そんな海に対峙する漁という仕事のシビアさを垣間見た気がしました。

ようやく旗が上がったのはいつもより30分遅れの9時半でした。
青空にはためく黄色い旗。操業可能の印です。よし、潜るぞ!

港の裏手にある貝の養殖場の脇を歩いて、漁場の磯に付きました。
海士はTシャツを脱ぐと、ぴったりとした青色の上下に着替えます。
既に磯に出ていた他の海士たちも同じ色の股引と長袖姿。
身に付ける服の色は地域ごとに決まっていて、よその漁場に入って
漁をすることは禁じられているのだそうです。
さらに海士は靴底がフェルトになっている磯タビをはき、水中メガネ、
獲物を入れるタマリ、それに持ち手が木で出来たバールのような道具を
身につけて磯の深みに向かっていきました。

私はラッシュガードを着て、マスクにシュノーケルとフィンを装着。
季節はほぼ夏とはいえ、まだまだ冷たい海の水。そういえば
海水温は気温の1〜2カ月遅れで暖かくなるという話をききました。
ほんとうはウエット・スーツに身を包みたいところですが、
素潜り漁での着用は禁止されているとのこと。
海中で体を動かし水の冷たさに耐えるしかありません。

海面には少し波が出ています。
比較的波がおだやかな岩の裏手で漁を始めることになりました。

海士は呼吸を整えると頭からまっすぐに海底へ潜っていきます。
大きい岩の下をしばらく覗き込み、道具をグッと差し込むと浮上。
「この岩の下にアワビがいるよ」
間を空けることなく何度も潜水と浮上をくり返し、
彼のタマリの中にはアワビがどんどんたまっていきます。

c0048685_1615751.jpg上段3個とウラになっているのがアワビ。下段左と中がトコブシ。殻の巻きはじめが緑色になっている貝は養殖場で稚貝の時期を過ごしたもの。3cmほどに成長したものを漁場に放流し、規定のサイズ以上に育ったものを捕獲する。
(ちなみに漁業権を持たない者が単独でアワビを捕獲することは
「密漁」となり処罰の対象になってしまいます・・・)

私といえば、海草のジャングルをかき分けて潜るのが精一杯。
ときおり岩の隙間にイセエビを見つけ触角を掴んではみるのですが
捕らえることは出来ませんでした。
それにしてもアワビ、どんな所にどうやって隠れているんだろう?

しばらくの間、潜水と浮上をくり返し漁は続きましたが、
海水の冷たさにさすがの海士も芯まで体が冷えてしまった模様。
ひとまず1ラウンド目の漁を終え、陸で暖を取ることにしました。
(下のページへ続く)
by glass-drop | 2005-06-29 16:03 | 自然