続 パイパティローマ その4
2018年 02月 15日
楽園
八重山諸島、インドネシア、マレーシア等々・・・
台湾を訪れた後もあちこちを旅した。
(特にインドネシアのバリ島には足繁く通った。
現地の言葉を憶え、何人もの友達が出来た)
東京での日々に不満があるという訳でもなかったのだけれど、恋にも似たときめきや刺激や高揚感も必要だったのだろう、その頃の私には。
「此処ではない何処かの楽園」を常に求めていた。
そうして旅を繰り返しながらやがて私は気付いて行く。
絶対的な楽園はどこにも存在しない、ただ文化の違う日常があるだけなのだ。ということに。
むしろ楽園とは、何処かへ向かおうとする気持ちそのもののことなのではないか、とも考えるようになった。
それからさらに年月が経った。
人生が先の見えない旅のように思える今、痛いほどに実感していることがある。
それは、今の自分が生きているこの何てことのない日常、つまり今までの自分が取捨選択しながら築きあげた今と此処こそが、今の自分にとっての最良の楽園なのだろう、ということだ。
そしてこの楽園は永遠に此処に在るものではなく、絶えず移ろい、いつ失われるとも知れぬ儚さの中に在るのだ、ということも・・・
(完)
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by glass-drop
| 2018-02-15 22:00
| 旅・散歩